|
|||
| 「兄貴が好きなんだ!!」 力強い声が式場に鳴り響いた 同時に、結婚式に参加している列席者全員が一斉に振り返る 式場入り口に、その声を上げた人物はいた、開け放った扉もそのままに 健康そうな青年だった 角刈りに、ねじり鉢巻、両手には鮪の切り身と酢飯入りの桶と包丁、やや細い印象を受けるが締まった肉体、その体を白く輝く割烹着で包んでいる 年齢は二十歳くらいだろうか その眼は一直線に新郎を見つめていた 「・・・マサ」 新郎のシンジは色々な感情がないまぜになった表情で呟いた シンジは彼、マサのことを知っていた、いや全てを知っていたと言っても過言ではなかった 彼らは過去に愛しあっていた だが、もう終わった関係だった 別々の人生を歩むはずだった そのはずだった マサはもう一度叫んだ 「兄貴が好きなんだ!!」 -----二年前 寿司職人になるため、故郷を飛び出し上京し、東京の老舗である山寿司に見習いとして働き修行することとなったマサ 毎日、朝早く、肉体的にも過酷な仕事ではあったが、マサは挫けずがんばっていた マサには夢があった それは故郷で自分の店を持つこと、幼い頃からの夢だった その信念があるから、マサは毎日の厳しい修行もそれほど辛くはなかった それに・・・別の理由もあった 厨房で仕込みをしていたマサはチラッと板場を覗いた そこには板場で寿司を握っている板前の姿があった 熟練の包丁さばきでネタを切り、流れるような動作でシャリとネタを握っていく 客はその素晴らしい腕前によって出来上がった見事な出来栄えの寿司を食し、舌鼓を打つ そんな満足げな客に愛想よく振舞う板前 兄弟子のシンジだった マサよりも数年早く山寿司で修行を始めたシンジ 並々ならぬ努力と、寿司を作ることに関しての優れた才能で早くも山寿司の板場を親方とともに仕切っていた 彼もまた自分の店を構えるのが夢だったが、シンジならその夢はきっと叶うだろう 寿司職人は彼にとってまさに天職に思えた マサの視線に気付きシンジの顔が一瞬ほころぶ いつも明るく、きさくで優しいシンジは誰からでも好かれる人気者だった マサもシンジのことが大好きだった、心底惚れていた シンジが店にいるから自分もがんばれる、それほどの存在だった 自分の夢、そして・・・シンジのことを考えながらマサは働いていた -----いつもどおりこの日の店の営業も終わり,後は明日の用意と片付けを残すだけとなった 片付けは一番下の弟子であるマサの仕事で一人ですべてをこなさなければならない この日も一人もくもくと掃除や仕込みをしていた マサはこの店が終了した後のこの時間が好きだった、仕事の内容ではない、違う別の理由があったからだ それは 「マサ・・・」 声とともに背後から急に抱き寄せられるマサ びっくりしたが、マサには相手が誰だかわかっていた 「兄貴・・・」 兄貴と呼ばれた人物はシンジだった 二人は恋仲であった 半年ほど前、今と同じようにマサが最後のシメの作業にはいってる時のことだった まだ仕事に慣れていなかったマサを見かねてシンジが手伝いにきたのがきっかけだった シンジは丁寧にマサに教えてくれた、仕事も、そのほかのことも・・・ 最初からシンジがそのつもりだったのかはわからない だが、気付いたらシンジはマサを抱きしめていた 「!・・・シンジさん・・・!?」 マサのひたむきな姿、まだ成熟していない体、そのかわいい面、すべてが愛しく感じた、その結果だった マサはノンケだったので、最初こそ驚いていたが、マサもシンジのことが大好きだったし、元々そのケがあったのだろう すぐにノンケから卒業する気持ちになり、身も心もシンジに委ねていた ![]() 「マサ、お前をさばいていいか?」 「・・・シンジさん・・・俺を・・・俺をネタだと思って存分にさばいてください・・・」 「嬉しいこといってくれるじゃないの じゃぁ、寿司とは順序は違くなっちまうが、先にコイツを握ったらどうなるのかな?」 シンジはおもむろにマサの男そのものの部分を握った、シャリを握る時と同じように見事な手つきで シャッシャッ 「アッー!!・・・はぁ・・ぁぁ・・・」 快感に呑まれ、絶頂に達し果てるマサ 「おっと、まだ力尽きてもらっちゃ困るぜ。寿司ネタの鮪は大好きだが、ホモのマグロは俺は嫌いなんでね」 そういうと弄ぶようにマサを優しくさばき始めるシンジ シンジはテクニシャンだった すぐにまた快感の荒波がマサを襲う 「あ・・・あぁぁ・・・兄貴・・・もっと・・・もっと俺をさばいてください・・・!」 「ああ・・・そうさせてもらうよ、もう・・・俺もおさまりがつかないんでね」 シンジはそういうとズボンをおろす ボロンッ それはすでに熱くたぎり、勃っていた マサは驚いた (す・すげえ、何てでかいんだ・・・色も形も俺のとはぜんぜんちがう・・・) 「どうだ?俺のをみてどう思う?」 シンジの男根は巨大だった 「すごく・・・大きいです・・・」 マサは今まで見たことないくらい巨大なペニスを見て素直に感想をいった 「でも・・・こ・・こんなでかいのが入るなんて・・・俺・・・怖いよ・・・兄貴・・・」 不安を口にするマサ、当然かもしれない シンジのペニスはそれほどに威圧感があった 「平気だよ、マサ。力を抜けばいい。ほら、ケツをこっちにだしな」 躊躇はしたが兄貴のいうことを信じて覚悟を決め、ケツをさしだすマサ 「いい子だ・・・じゃいくぞ・・・」 ギュギュ・・・ マサのアヌスはきつかった、初めて貫かれるのだから当然だった 「うああああぁ」 マサは激しい痛みに叫び声をあげる そして ズニュル・・・ン 「あおおっ!」 痛みとともに狂おしいほどの快楽がマサ包む 「あ・・兄貴ぃぃぃ・・・すごく・・・気持いいよぉ・・・」 「ああ、それじゃもっと気持ちよくしてやるからな・・・ほら!」 「おおおおーーーー・・・・・」 シンジを受け入れたマサ こうして二人は一つになった その後もたっぷりとシンジに優しく男同士の愛し方を享受され、愛しあった それまでシンジさんと呼んでいたのだがその日を境に色々な意味を含めてこう呼ぶことにした 『兄貴』 と 行為が終わったあと、愛を誓い合う二人 その日からずっと二人は同じ時間に愛しあった、次の日も、また次の日も・・・ 今日も同じようにシンジは来てくれ抱きしめてくれた、この後いつものように愛しはじめる・・・はずだった、マサはそう思っていた だが違かった 不思議に思ってマサは振り返りシンジの顔を覗いてみると、その表情は曇って見えた 「兄貴・・・どうしたんだい?浮かない顔しちゃって」 シンジはしばらく見つめるだけで黙っていた だが、なにかを決意したような顔になり、こう切り出した 「マサ・・・俺は山寿司の新店舗を任されることになってな、明日からそっちに行くことになった。だから・・・この本店で寿司を握るのも・・・お前を握るのも・・・今日で最後だ」 「え・・・・」 一息ついてからシンジは続けた 「同時に親方に跡取りにならないかって言われてな。店が軌道に乗ったら時期をみて、親方の娘さん、つまり純子さんを嫁にもらってくれないかってね・・・もちろんこんないい話はほかにない。いずれは俺がこの山寿司という最高の寿司屋の親方になれるんだものな」 マサは絶句した 突然の話だった 親方が以前からシンジを跡取りにしたがっていたのはマサも知っていた、だが 「兄貴はホモじゃないか!女性を愛すなんてできない、そうだろ?それに結婚したとしても俺を愛すことだってできるじゃないか!!」 マサは必死だった、なりふり構ってなどいられない、最愛の兄貴がいなくなってしまうかもしれないのだ が、非情にもシンジはこう言い放つ 「俺は・・・自分を曲げてでも女を、純子さんを愛すように努めるよ。それに純子さんは素敵な人だ。彼女を裏切ったり誠意のないことはしたくない」 純子のことはマサも知っていた、マサからみても綺麗な人で、それに優しくて素敵な女性だった 「兄貴・・・俺・・・俺・・・・そんなの嫌だよ!!兄貴とずっと一緒にいたいよ!!」 すこし間をおいてシンジはこういった 「マサ・・・。自分の店を持つってのは俺の夢だったんだ。その夢が今目の前に転がり込んできたんだ。・・・つまり、俺は自分の夢とお前を天秤にかけた結果ってことだ・・・」 シンジは言いたくなかった、だが言うしかなかった、終わらせるしかなかった 「お前より、俺は自分の夢を選ぶ」 その言葉にうなだれるマサ だがしばしの沈黙の後マサは顔をあげ、こう呟いた 「・・・兄貴・・・その夢だったら・・・店を構えることだったら俺と一緒にだってできるよ・・・俺がもっと腕を上げて立派な職人になったら・・・きっと・・・・・」 「マサ・・・・・」 シンジは言葉がなかった、マサの純粋な気持ちにシンジは応えることができなかった 「・・・・・・・・・兄貴、俺、立派な職人になって兄貴を迎えにいくよ・・・ああ、きっと迎えにいく・・・そして店を構えて一緒に寿司も兄貴も握るんだ」 シンジの胸をしめつけるマサの言葉、シンジだってマサを愛していた 「マサ・・・もう・・・」 決めたことだった、自分の夢のために 決心を固めたようにマサはこう言った 「俺は兄貴の事・・・諦めないよ!!絶対に!!立派な職人になるまで・・・それまで・・・俺、兄貴とは逢わないよ。待っててよ兄貴!!」 そう勢いよく言うと、マサは店からでていった 一人残されたシンジは様々な想いを錯綜させていた これで良かったのか、俺は大事なものを失ってしまったのではないか 「マサ・・・・」 次の日からシンジは本店を離れ分店のほうに移って働き始めた あの夜以来マサとはまったく会っていなかった 毎日忙しかったが、それでもマサの事を忘れたことはなかった 時は流れ シンジの受け持つ分店も軌道に乗り安定したので、前々から予定していた結婚をすることになった そして今日、シンジと純子が夫婦になる日、挙式だった その日にマサは現れた 最後に見たときよりずっと逞しく、職人ぽくなったマサ 「兄貴!!俺の腕前を見てくれ!!」 そう叫ぶとマサは手に持っていた鮪をさばきはじめた ザクザク 流れるような動作でさばくマサ そしてさばいたネタを酢飯と合わせ握っていく シャッシャッ 驚くほど上達していた、その仕事ぶりはシンジのそれに酷似していた シンジは自分の眼を疑った マサが自分そっくりの仕事をしたのもあるが、それ以上に上達ぶりに驚いた 二年の間にどれほどの修行をしたのかわからない、とても二年で修得したとは思えないほどの腕前だった それに努力だけではなく、マサは才能もあったに違いない マサは寿司職人になっていた 出来上がった寿司は美しかった、見事だった 「どうだい!兄貴!!見てくれよ!!俺いっちょまえになっただろ!?兄貴が好きなんだ!!」 シンジの中でなにかが弾けつつあった、大事な事を思い出したみたいにこみ上げてくるものがあった マサは続ける 「兄貴、俺の寿司を食べてくれ!その後からでも結婚はできるだろ?なぁ兄貴!兄貴が好きなんだ!!」 シンジはすこし迷った、すぐに駆け出して寿司を、マサを食べてやりたかった、だが、だが背負っているものがあった 躊躇するシンジ そこへ隣にいた純子がこう言った 「シンジさん・・・行ってあげて・・・食べてあげてください・・・私のことはいいから・・・」 全て気づいたのか、純子はそうシンジを促した シンジは純子に「すまない」と深く頭を下げ感謝するとマサの元へ歩き出した そのシンジの行動に気付き止めにはいる親方 「シンジ!!どういうつもりなんでぃ!!?」 シンジはもう迷っていなかった 「親方、すいません・・・俺、あいつが・・・マサが好きなんです!アイツと寿司を作りたいんです!!本当に、本当にすいません!!」 親方を振り切りマサの元へ進むシンジ すこし先に満面の笑顔のマサが待っている そしてマサの前まで着くとシンジは優しくこう言った 「鮪に関しちゃたいしたもんだ。それは認めるぜ。だがな鮪だけじゃおめえが一人前になったかなんてわかりゃしねぇよ。だから、他のネタも握ってもらわねぇとな」 マサはそう言われると思っていたのか、こう返す 「もちろんだよ兄貴!!他のだって上手に握れるよ俺は!それに・・・兄貴のことも今ならきっとうまく握れると思うよ・・・俺は」 自信に満ちたマサの言葉に笑みがこぼれるシンジ 「俺も握るってのか?はっはっは!こいつぁいいや!是非握ってもらおうじゃないか!!」 そういうとシンジはマサの手を握り外へと続く道へ歩き出す 背後から親方の声らしい怒声が響いていたがかまやしない もうそんなことはどうでもいいことだ 二年の時を経て成就した二人の愛 強く握られた手は互いの気持ちを物語っているようだった もう二人は互いを引き離すことはないだろう、なにがあっても 「兄貴、俺たちこれからずっと一緒だね」 「ああ、ずっとだ。これからずっとお前を愛してやる」 「すごく・・・嬉しいよ・・・兄貴」 二人は外にでた 外はまさに晴天と言うに相応しい天気で、空には雲ひとつなく晴れ晴れと冴え渡っていた 見上げると、四月の穏やかな日差しが、まるで二人の未来を照らすように、さんさんと輝いていた 続く |